光と闇Ⅴ

 古今東西、多くの為政者たちは、集団心理を都合よくコントロールするツールとして「恐怖」を利用してきました。21世紀の現在においても、恐怖心を植え付けることで国民を黙らせ、反抗させないように抑え込んでいるリーダーたちはたくさんいます。暴力的で理不尽な見せしめを行うと同時に、従順な人には安定や富を与える。こうした飴と鞭を使い分ける手法により、人々から意思と自由を奪い、抵抗する力を弱らせているのです。

 

 こうした支配・被支配の構造は、国家規模に限らず、組織やグループ、仲間内やパートナー、家族の間においてさえも、実はよく起こっていることです。相手に恐怖心や無力感を植え付けて、自分の立場を優位にさせようとする。こうしたパワーバランスは、実は一対一の関係性において頻繁にみられます。支配する側がかなり意識的に行っていることもあれば、本人も何が起こっているのかよくわからないうちに、そういう関係性なってしまっている場合もあります。

 

 やっかいなのは、多くの場合、支配される側の立場の人の方が、そうしたパワーバランスの渦中にいるという事実に、なかなか気が付きにくいということです。もしくは、自分がいびつな関係性に陥っていることに気づいていたとしても、そこから抜け出すことが困難に感じていることが多いです。相手との関係性において、自分は無力だという認識を抱いてしまっていますから、そう簡単に抜けられるはずがない、と信じ切ってしまっているのです。

 冷静な視点でみてみれば、誰かにコントロールされ、自分の望みや思いが押し殺されている状況自体が、不自然で歪んでいます。けれど、相手に力を明け渡してしまっている人というのは、今の状況が「変わる」ということに対してさえも恐れを抱き、アクションを起こすより現状維持を望んでしまうことが多いのです。

 

" The devil you know is better than the devil you don't know."

(知らない悪魔より、知っている悪魔の方がまし)

 

 本当はこんなことは嘘で、悪魔は悪でしかないのですが、恐怖心や無力感というものは、人の理性や判断力を鈍らせ、真実を見る目を曇らせてしまいます。そして、変化を起こす決断力や、行動を起こす勇気が湧き起こらないまま、自分には力がない、弱い存在だと勘違いしたまま、他の誰かに自分の意思決定機関を委ねてしまうのです。

 

 支配・被支配の関係性に陥っている場合、被支配側にいる人は、受け身の姿勢でいることが多いです。元々穏やかで、周囲に自分を合わせるのが得意な、受け身の態勢を取りがちな性格の人が被支配者側になりやすいように思います。そのためか、誰かとの関係性に対して、今のような状況になっているのは、相手がそれを望んでいるからだと思う傾向が強いです。本当は、人との関係性において、一方だけの思いが現実化するということはありません。現実に起こっていることは、自分自身が招き寄せていることです。一方通行ではなく、双方の思いが結実したことによって、起こっています。

 ですから、生き方や人生を誰かにコントロールされ、自分は無力なのでそれに従うしかない、と思い込んでいるかもしれませんが、その状況を望んでいるのは、自分自身でもあるのです。望んでいるというとやや語弊があるかもしれませんが、少なくとも、「そうなるもの」だと深く信じているために、現実がそうなっているわけです。宇宙はシンプルに、そんなあなたに対してぴったりの、人を支配するのが得意な人物をあてがっているだけです。

 

 では、そんないびつなパワーバランスから抜け出したい時はどうしたらいいか。答えは簡単です。「もうこんな関係性から抜け出す」と強く決心することです。自分は無力なのではなくて、無力だと思い込んでいるだけです。まずは、そう思い込んでいる自分と決別するのです。そして、宇宙に宣言します。私は自分の意思と自由を取り戻します、と。

 まずはこの決意表明を行ってください。意思の力は絶大なので、この宣言がきっかけとなり、エネルギーが動き出します。おそらく想像以上のスピードで、相手と対峙するシチュエーションがやってくるはずです。その時に、いつもの恐怖心に負けないこと。相手と闘うのではなく、自分の中の恐れと闘っていると思ってください。そして、勇気をもって自分の発すべき言葉を述べ、とるべき行動をとってください。毅然とした態度で。

 

 人をコントロールしたがる人というのは、本当は案外コンプレックスにまみれていて自分に自信がなかったりします。それまで弱いと思い込んでいた人が、急に自信に満ちて堂々とした態度をとってきたりすると、ひるんで目を泳がせたりします。これまでの、自分にとって都合がよかった関係性が終わることを察して、怒りをぶつけてくるかもしれません。しかしこの怒りというまやかしに負けてはいけません。怒りこそ、恐怖心の表れだからです。相手は恐れているのです。

 

 信じてほしいのは、闇よりも光の方が強いということです。恐れや悪意に対して、こちらが愛と善意で応じれば、必ず勝てるのです。これは、現実世界でも、見えない世界でも同じことです。闇は光に勝てないことを知っているので、あれこれと小手先のまやかしテクニックを使って、相手を騙そうとしているだけです。

 

 闇に焦点を合わせるのではなく、光に焦点を合わせてください。そうすれば、光のパワーを味方につけ、見える世界でも見えない世界でも、助けてくれる存在が現れるはずです。信じる気持ちと、希望を捨てないこと。どんな状況でも、心から自分が望みさえすれば、変えることができます。