人類が地球に現われて以来、何十万年もの歴史の中で、私たちは長い間、飢餓との闘いを強いられてきました。今のような飽食の時代になったのは、ほんの最近のことです。現代の人々の主な死因は心臓疾患や癌といった病気ですが、かつては飢えや伝染病、ケガ、そして誰かに殺されることが主な死因でした。
こうした時代が長い間続いてきたために、私たちの体(脳)は、どうしたら飢餓から生き延びられるか、どうしたら敵から身を守れるかといった、動物的な反応を司る分野が大きく発達しました。人がカロリーの高い食べ物を欲する傾向があるのは、かつては食べ物が常にあったわけではないので、できるだけエネルギーをためておく必要があったからです。蛇や雷の音に敏感に反応し、警戒したり恐怖心が芽生えるのも、生存本能が働くからです。"Fight or Flight"(闘争か逃走か)という状況下では、こうした危機管理能力の高い人間ほど生き延びる確率が高くなりました。
時代が変わり、環境が大きく変わってはいても、私たちの基本的な肉体構造はほとんど変わっていません。だから、もうそんなにエネルギーをためておく必要性がないのに、脂肪分の多い食事に魅かれてたくさん食べてしまったり、他人に対して必要以上に警戒心を抱いてしまいます。人は恐怖心を感じると、脳にアラームが鳴り、戦闘モードがオンになります。その際、理性を司る部分は後ろに引っ込んでしまうため、落ち着いて考えて行動することが難しくなります。
ストレスをため込んでいる時も、脳はそのような状態になります。理性が働きにくくなるのです。視野が狭くなり、自分を取り巻く状況を客観的に眺めるのが難しくなり、怒りやすくなります。人間が危機的状況に置かれた際、優先されるのは、落ち着いて理性で考える能力ではなく、その場を生き延びるために瞬時に動く能力です。攻撃的になったり、逃走本能が働いたり。
私たちが、理性的になることができず、不安などの感情が優位になっているように感じる時、まずはストレスを逃し、リラックスすることが大切なのは、こういったメカニズムがあるからです。
それから、大事なのはもう一つ。私たちは、肉体だけの存在ではないということに気づくことです。私たちは、肉体と同時に霊体ももっています(2つがハッキリ分かれているわけではなく、繋がっています)。私たちが普段認識しているのは、肉体の方が多いのではないかと思います。物理次元で生活しているのですから、当然ではあります。ただ、人間が肉体だけの存在で、肉体に全てを支配されていると考えてしまうと、行き詰まることになります。私たちは、霊体、つまり魂の存在でもあるわけで、こっちが本来の姿だからです。魂の声をきかずに、肉体次元で判断してばかりいると、本来の目的や望みと合わなくなり、様々なことがうまくいかなくなります。
行き詰まった感じがしたり、同じパターンを繰り返していたり、ネガティブな感情ばかりが沸き上がってくるような時は、一度頭を空っぽにして、気持ちを落ち着かせ、魂の声をきいてみることをお勧めします。魂の声がきこえないというのは、きっと忙しすぎたり、頭が特定の考えでいっぱいだったり(とらわれ)、感情的になり過ぎていたりして、雑音をきいてしまっているのです。魂とのつながりがなくなることは絶対にありません。
そして普段から、魂を前面に出す、ということを意識的にしていくこと。霊性の時代に突入した今、そうすることが比較的容易になってきています。肉体、動物的な本能に支配され、それが優位である人の方が生き延びやすかった時代は、終息に近づいてきています。こうした流れは、今後加速していくでしょう。エネルギーや、霊的な世界への関心も、年々高まってきています。物理次元にばかり目を向けるのではなく、魂レベルで感じ、判断し、動いていく。そんな生き方が時流に合った生き方になってきています。