アファメーション

 昨年8月に91歳で亡くなったルイーズ・ヘイさんといえば、アファメーションの力を世界中に広めた先駆者として、自己啓発・スピリチュアル界では知らない人はいない存在です。

 私も、彼女の著書を何冊も読み、その生き方を含めた力強い前向きパワーにだいぶ助けられました。

 

 ルイーズさんの本に出合った頃、はっきり言って私はネガティブまみれでした。昔から批判精神が旺盛で、何事も最初から疑ってかかる所がありました。物事を斜めから見る習慣がいつの間にかついてしまい、若い頃はそんな皮肉屋である自分を、性分なのだから一生変わることはないだろうと考えていました。

 けれど心のどこかでは、そんなひねくれた自分に違和感を感じ、このままでは嫌だ、このままでいてはいけない、という思いがありました。本当は、私は人を信じたいし、人を愛したい。思えば、とても小さかった頃の私は、それができていました。自分で言うのもおかしいですが、ストレートでピュアで、人が言うことは何でも信じてしまうような子供でした。それが、世の中の汚い部分や人のダークな一面を垣間見ていくうちに、次第に変わっていきました。いちいちショックを受けてへこむのが苦しくなっていったのです。それで私は、防御策として、逐一裏切られて嫌な思いをするくらいなら、最初から世の中は汚いものだと思うことにしよう、人は信じられないものだと思うことにしよう、と自分自身を納得させるようになっていきました。

 そんなこんなで、ナイーブな内面を抱えながらもひねくれた少女に育っていった私は、すっかりネガティブ思考が身につき、でも本質的にはピュアな部分も併せ持つために、違和感と自己嫌悪感も同時に抱いているという、自己矛盾した心の状態が続いていました。

 

 ルイーズ・ヘイさんの本と出合った頃は、そんな自分にほとほと嫌気がさし、また自分自身の内面を揺さぶるようなウェイクアップ・コールが起こっていた時期だったので、読みながらとても共鳴する感覚がありました。

 けれど、ルイーズさんの本にもたくさん書かれていて、彼女自身がずっと実践してきたポジティブなアファメーションに関しては、なぜかその時には実践する気持ちになれませんでした。思うに、ずっとネガティブ優勢の心理状態で生きてきた人が、いきなり180度ポジティブにシフトすることはちょっと難しいというか、無理があります。ルイーズさんのように、自分のダークサイドを克服してポジティブに自己変革しながら理想の人生を生きられたら幸せなのだろうな、とは思いつつも、ちょっとその時の自分にはその道のりが遠すぎて、いきなりポジティブ全開にはなれないし、拒否反応が出てしまったのだと思います。

 

 その後私は長い時間をかけて1つ1つ心のお荷物を外していき、かつての自分とは比べものにならないくらい内面がクリアーになりました(まだ完璧ではありませんが)。ネガティブ思考の餌食になることも減り、ともすればダークサイドに偏りがちだった自分が、気づいたらポジティブ優勢になっていました。その状態になって初めて、私は改めてルース・ヘイさんのポジティブアファメーションを具体的に実行してみようという気持ちになりました。「これを実践すれば自分は更に変われる」という確信のようなものがありました。

 実践してみると、アファメーションというのは本当にパワフルで、思ったより即効性があって驚きました。言葉の力というのは、私達が考えている以上に影響力があります。そして、心の中で唱えるより、実際口に出して言った方が絶対に効果があります。

 

 最近わかったのですが、ポジティブアファメーションというのは、心の中で信じていようがいまいが、とりあえず口に出して言ってみることに意味があります。自分自身が疑っていても、信じることができなくても、とりあえず”言葉”に出して言うことで何かが変わるのです。ネガティブまみれだったかつての私は、そのことさえ信じることができず、実践するまでにかなり遠回りをしてしまいました。その効果を実感した今となっては、ネガティブまみれであっても、信じられなくても、とにかく騙されたと思ってブツブツ唱えていればもっと早く楽になれたかもしれない、と思います。