気づきは、その人の準備が整ったタイミングでやってきます。人生において、それまでの生き方を根本的に変えていくことになる(トランジション)時期には、まず最初に様々な形で”きっかけ”がやってきます。内なる声、ガイダンス、ウェイクアップコールを聴いたり、事故や病気、アクシデントといった現象が起こることもあれば、何かとの別れが、新しい生き方へ移行するためのショック療法的な役割を果たすこともあります(逆に何かとの出会いがそうさせることもあります)。
どんな形でやってくるにしろ、一度気づきが起こって、その流れが始まってしまうと後戻りできないのが普通なので、腹をくくって運命に向き合うしかありません。外側で起こっていることなんかより、自分の内側で起きている現象にこそ、逆らえないものです。
この移行期には様々な葛藤、変化、感情の浮き沈み、出会いと別れ、などが起こりがちです。そんな時こそ、自分という軸にしっかりと納まり、グラウンディングをして、1人静かになれる場所と時間を作って内観することが助けとなります。そうすることで、本当は誰もが繋がっている、大いなる存在に対する信頼感が高まり、自分は何があっても大丈夫だ、信じる道を進めば良いのだ、という揺るぎない確信が持てるようになるからです。外側で起こっていること、外部の声に必要以上に惑わされないためにも、1人でいることが大きな意味を持つこともあります。
魂を磨く旅路において、人がある段階に達すると、様々な「お試し」のようなものがやってきます。このお試しは、魂が更に磨かれていくための通過儀礼ともいえるもので、ここでふるいにかけられ、堕ちていく魂もあれば、上昇を遂げていく魂もあります。後者の方が狭き門であることは言うまでもありません。魂の旅路でやってくる数々のお試しは、人のエゴを上手にくすぐるテクニックをうまく心得ています。この罠に引っかかる失敗は、誰しもが一度は経験するものです。
魂磨きの旅で人が陥りがちなトラップや、障壁となるシチュエーションをいくつかご紹介します。
①孤独
魂磨きの旅は、基本的に孤独です。ただし、現世的な見方をすればですが。私たちは、身近に全く同胞がいない状況で、ただ1人、自身の内側から湧き出てくる声だけを聴いて進んでいくことになったとしても、ぶれずにいるタフさが必要です。大いなる力とのコネクションを強くし、信頼し、身を委ねる勇気を持つことが求められます。また、どんな障害がやってきてもそれを乗り越えていく気力と意思の力も試されます。現実生活として、孤立するということを言っているのではありません。現世的なコミュニティーに属していたとしても、内面的な決断と選択は、常に個人的に行われるものです。
②虚栄心
これは、ある一定レベルの魂の進化を迎えた人々が、皆直面している障壁だと思います。私たちが虚栄心の罠にはまるかはまらないかを見極めるために、敢えて権力や特殊な能力を授けられることだってあります。人より何かが秀でていたり、富や力を得たり、崇拝されるような立場にいる人ほど、この虚栄心の罠には注意しなければなりません。この段階で、かなり多くの魂が脱落していっていると思います。謙虚さを失わないために、常に自分を戒める必要があります。
③依存
魂の進化の旅路は、ステップアップしていくほどに先人の数が少なくなります。自分が進んでいる方向性が合っているのかどうか不安になると、一見自分よりも「先」を進んでいるかのようにみえる、教師やグルに頼りたくなるものです。けれど、教師やグルだと思っている人が、まだまだ虚栄心の虜になっている段階にいたり、そもそも教師やグルのフリをしている詐欺師だったりすることさえあります。お互いの恐れとコンプレックスがうまく引き合うと、共依存の関係に陥りやすくなるので注意が必要です。面白いことに、人が共依存の関係に陥っていく時というのは、お互いが無意識の場合が多く、関係が切れてからか、もしくは切れる直前に片方が気づくというパターンが多いです。依存の関係を終わらせるためには、かなりのエネルギーを必要とします。
④焦り
一度真理の道に目覚めると、先へ先へと急ぎたくなるものです。けれど、落とし切れていない垢がまだあるうちは先へ進んでも混乱するだけですし、癒すべき傷が癒えていないのに次へ進もうとしてもつまずいて転ぶことになります。一気に坂を上ろうとしたり、近道をしようとしたり、ドラマチックな変容を望む気持ちもまたエゴです。与えられたタイミングで、愚直に目の前の課題をこなしていく忍耐強さと、謙虚さを持ちましょう。
⑤期待
私たちはとかく未来をあれこれ想像して、こうありたいとか、こうあるべきとか、華々しい妄想を抱きがちです。けれど、こうなったからああなるとか、こうすればこれがもらえるとか、方程式のように答えがやってくることをはなから期待しない方が身のためです。いずれ失望することになるかもしれません。この世はそう単純なものではないからです。世の中で起こっているネガティブな出来事や、人の未熟な点をあげつらっていても気分が沈むだけです。それがこの世というもの、それが人間社会というものです。そして、自分もそんな人間の一人です。できないこと、足りてない部分にばかりフォーカスし、完璧な姿じゃないことに失望するのはナンセンスです。人間なんだから欠点や裏表があって当たり前です。みんなそうです。そういうものです。今の自分を受け入れて、今やるべきことに集中しましょう。
また、他人に対しても、こうなってほしいとか、この人はこうあるべきだとか、過度な思い込みや期待は最初から持たないことです。たとえ家族のような身近な存在であっても、その人の人生と選択を、尊重してあげましょう。自分は今、その人の世界をのぞかせてもらっているのです。
トラップは実に巧妙なやり方で、私たちの意思を試してきます。忍耐、忍耐、忍耐。謙虚さ、手放す勇気。内省と洞察。疲れたら立ち止まりながら、自分のペースで、謙虚に、淡々と、旅路を進んでいきましょう。神様は、その人にこなせない課題は決して与えません。その人の準備ができた時に、乗り越えられる範囲の試練が与えられます。