他人に人生を明け渡さないために

 世の中の大多数の人より、エネルギー的に敏感で繊細なタイプを、スピリチュアル用語で「エンパス」と言います。10人に1人とか5人に1人ほどの割合でいるそうです(日本人は割合が多い)。

 

 エンパスは、他人が考えていることや感情の動きに敏感なので、先回りして相手の考えに合わせた言動をとったり、相手の感情を逆なでしないように自分を抑えたりと、幼い頃から抑圧経験を重ねてきていることが多いです。

 また、場のエネルギーにも影響を受けやすく、エネルギーが淀んでいたり、ネガティブな気が充満している場所に身を置くと、頭が痛くなったり気持ち悪くなったりするなど、精神だけでなく肉体の調子も悪くなります。

 

 

 日本人に多いといわれるこのエンパスタイプの人は、私自身もそうなのですが、他人のエネルギーに振り回されやすい、という特徴があります。自分をしっかり保っていないと、カリスマ的な力を持った人や、ナルシスト的傾向がある「強い人」に、支配されてしまう恐れがあります。エネルギー的に支配されている時というのは、多くの場合、自覚症状がありません。

 

 精神世界、スピリチュアルな世界には、自身のカリスマエネルギーを使って他人を操作しようとする「師(グル)」が結構存在します。彼らの多くは、サイキックな能力が人より秀でていたり、人間の心理のメカニズムを熟知していたりして、どのようにしたら他人が自分の言うことを聞いて、どのように自分の影響力を大きくすることができるのかを知っています。エネルギーを操るテクニックを上手く利用しているのです。

 そのようにして、自分の信者、自分の主催するコミュニティーをどんどん広げていき、崇められる立場に身を置いた状態をキープすることに力を注ぎます。彼らの多くは、最初は純粋な気持ちで奉仕の世界に飛び込んだのかもしれませんが、自分が影響力を持ち、金銭的にも潤っていく経験を重ねるうちに、次第に神ではなくエゴの声を聴くようになってしまったのだろうと思います。自分がエゴの声を聴いてしまっていることにすら、気づいていないかもしれません。

 

 私はこのような堕ちた天使をたくさん知っています。せっかく天から与えられた才能や、培ってきた能力を、人助けという名の下で、実は自分の虚栄心を満たすために使ってしまう人々です。ある程度までスピリチュアルに開花した人は、どこかの段階で、この試練が与えられるようです。エゴの甘い誘惑に打ち勝ち、神性な道を歩む意思が試されるのです。こうした”お試し”は、人間の進化の過程で必ずやってきます。

 

 

 こうした人が力を持つ背景には、彼らにエネルギーを注いでしまう人々の存在があります。私も、人生において何回か、エネルギー的に誰かに自分を支配されるという経験をしました。精神的に支配されている間は、いつも、自覚がありませんでした。大抵、呪縛が解けてしばらくしてから、自分が洗脳されていたことと、相手のエゴに気づくのです。

 支配される、と表現は受け身ですが、実際は、そのようなシチュエーションを招いたのは私自身の問題です。人生において自分の身に起こることは、全て自分が招いたことです。私が、私の中の何かが、そういう人を人生に呼び込み、精神的に強い影響を受けるという経験をし、自分の意思で決める力を一時的に封印してしまったのです。誰か、自分と神様との間に立ってくれる人がいないと、私は神様と繋がれないと思い込んでいたのです。

 

 人生で、自分を導いてくれる人や、知恵を授けてくれる先生が必要ないとは思いません。自分よりもある分野で多くの経験を積んできた人や、専門家の意見などはとてもありがたいですし、助けとなってくれます。

 けれど、私が自分の失敗から学んだことは、いくら自分よりある分野で能力が長けていると感じる人がいたとしても、その人を自分よりも「上」に置く(反対に「下」に見たりすることも同じ)必要はないということです。他者を上下の見方で見始めると、世の中の不完全性、自分自身の不完全性という二元論の呪縛に自分が苦しむことになります。自分は未完成で、未熟で、能力が低いという思い込みに縛られると、それを補ってくれる「誰か」を求めて依存するようになります。そして、引き寄せの法則が働き、自分に依存してくる人を求めている「先生」が現れます。

 セミナーや講習会などを転々とし、グルを求めてスピリチュアル難民となっている人は、どこかで自分の力を信じることができていないのだろうと思います。そして、自分がグルになりたがっている人の恰好の餌食となってしまうのです。

 

 

 精神世界で大きな影響力を持つ人に限らず、日常的にも、エゴイスティックでナルシストな人たちというのはよくいます。エンパスの人たちは、他人の影響を受けやすいので、自分をしっかり保つ、他人との境界線を引く、ということは意識的に行った方が良いと思います。今まさに、誰かの強いエネルギーに自分の意志力が奪われそうな経験をしている人は、とにかくその人から距離を置くことをお勧めします。物理的な距離を置くということは、エネルギーの世界でも有効です。

 結局は自分の意思が招いている状況なので、自分が強く「この関係性を終わらせる」と念じれば、そのように物事が動いていきます。「こういう人がいるからしょうがない」のではなくて、「こういう人を人生に招かない自分になる」と決めればいいのです。