魂の成長は、焦る気持ちとのたたかい

 最近、書店に行くと『精神世界』『スピリチュアル』コーナーがどんどん拡充していってるなあ、と感じます。数年前と比べて、どの書店もそうした本が置かれているスペースがどんどん広くなり、かつてはどちらかというと”ひっそり”置かれていることが多かった分野だと記憶しているのですが、今では逆に華やかに、堂々と置かれている印象を受けます。それだけ、出版される本も読者も増えているのだろうと思います。フラワーエッセンスの本など、私がフラワーエッセンスを勉強し始めた頃はインターネットでしか手に入らなかったものですが、今では大きな書店に行くと、何種類も解説本などが置かれていて、時代の急速な変化に驚きます。

 

 こうした本やインターネットに書かれている情報などのおかげで、私達の意識もどんどん刺激を受け、気づきが広がり、今までよりもっと広い観点で「人生」「生きること」を捉えるようになった方も多いのではないかと思います。うぶすなにいらっしゃったり、問い合わせをしてくださるお客様は、もう既にこの手の本をたくさん読まれていたり、インターネットなどで知識を吸収したりして、精神世界の探求を個人的に進められてきた方がほとんどです。

 心の内をご自身で見つめ、抱えていることや悩んでいることをお話されるのですが、話しながら「本当はこうすれば良いとわかっているんですけどね」「自分のここが問題だとはわかっているんですけど・・」といった感じで、自分がどこに引っ掛かっており、どこを変えていけば良いのか、課題にはもう自分で気づいていらっしゃることが多いです。そして、この先自分が進むべき道というか、ここを目指すべきなのだろう、という方向性も漠然と見えていらっしゃいます。頭ではわかっているんだけど、何かが引っ掛かっていたり、なかなか実行に移せなかったり、本心から受け入れることができずにいる、というジレンマがあるようです。

 真理、もしくはそれに近い情報を受けとると、自分の本質が反応し、気づきが広がります。自身が本当に望んでいる生き方、生まれる前から決めてきた目標、使命、ゴールにより近づきたい、本当の自分を取り戻したい、と深い部分からやってくる衝動に突き動かされ、今の自分に向き合わざるを得なくなります。それは自然な流れなのだろうと思います。そして、今は情報があふれていますから、より自分らしく生きるためにはどのようにあるべきなのか、イメージが湧きやすく、目標を描きやすいのかもしれません。

 

 先に、「こうあるべき」という姿、生き方があり、そこを目指したい、という強い思いがあるので、「そうではない自分」という見方で今の自分を捉えると、失望したり、嫌になったり、できていない自分を責め、未熟であることを恥じたりもします。精神世界の本の中に出てくる、偉大な聖人と自分とを比べ、自信を失ったり、または自分も早くあのようになりたい、どうなったらなれるのだろうかと、いろんなやり方を試しては、思ったよりも自分が変わらないことにがっかりしたりします。

 私は、これまで様々な講習やセミナーなどを受けてきましたが、そこで出会ったスピリチュアルな世界に興味があり、魂の成長を目指す方々特有の、見えない世界に憧れるあまり陥ってしまいがちな罠があることに気づきました。皆がそうだというわけではもちろんないのですが、精神世界の中で自分がどれだけ進歩しているか、どれだけ”知って”いるか、どれだけ守られているか、どれだけ不思議な世界とつながっているか、目に見えない世界の中で自分の立ち位置を気にしている方がとても多かったのです。

 前世が見える方に、あなたはマリア様の生まれ変わりですよと言われたと誇らしげに話す方がいました。また、私には天使が見えるから、毎日その天使達とお話してアドバイスをもらっている、と話す方がいました。その方は、たいそう自信あり気な様子で、お願いしたわけでもないのに、フラワーエッセンスを学んでいるという私に、あれこれとアドバイスをしてきました。その話をそばで聞いていた他の方々も刺激を受けたのか、いかに自分が見えない世界とコンタクトをとっているか、という話で盛り上がり、その場は一時自慢大会のようになってしまいました。

 見えない世界に繋がることを否定するわけではないですし、そうした世界があることも私自身感じてはいますが、その時の私には、その方達が、自分が作り上げた幻想世界にとらわれ過ぎて、現実の自分というものが見えなくなっているように感じられました。

 天使もいるでしょう、前世もあるでしょう。そうした存在が自分を励ましてくれることもあると思います。けれど、やはりどんなことでもそこに必要以上にとらわれてしまえば、執着や驕りになります。とらわれれば、真理を見抜く目も濁り、自分が今向き合うべき課題がみえなくなります。甘く優しい幻想世界に逃げたくもなるでしょう。

 

 魂の成長とは、ある日突然目覚めが起こり、自分が180°違う人間に生まれ変わってしまうような、急激な変化は起こりえないものだと思っています。一つ一つ気づきが起こり、その都度学びがあり、そこで波動が上がり、視野が広がり、そして新たな課題が見つかり、またそこに向き合い、成長し・・そういったことの繰り返しで、気づいたらかつての自分より成長していたことに気づくものではないでしょうか。何の「学び」もないまま、突然ステージが上がるとか、別の自分になっていたとか、いきなり雷に打たれたように悟りを啓いたとか、最初から期待しない方がいいと思います。また、たとえ今いるステージが一段上がったとしても、魂の成長に終わりはなく、何かを克服したと思ったらまた次の課題が表れて、というように、次から次へと成長を促す出来事が起こります。学びは永遠に続くのです。誰かより自分が上だとか下だとか、そういったことにとらわれているうちは、本当の目覚めは起こらないと思います。

 

 急速な変化を求める裏には、今の自分に対する不満、自信のなさ、受け入れがたい思いなどが強くあるように思います。今現在の自分の姿を認めたくない、本当の自分はこんなはずではない、という気持ちが、まるで魔法の杖を一振りしたら違った世界が開けていくような、ミラクルな世界を夢見てしまうのかもしれません。フラワーエッセンスも、人の「学び」をスムーズに進めていくお手伝いをしてくれるものであって、ワープを提供してくれる夢のツールではありません。そこを勘違いされて、それさえ飲めば人生がコロッと変わるのではないかと期待されても、がっかりすることになると思います。

 

 エッセンスを選ぶお手伝いをさせていただいて感じるのは、結果的に「速く」学びの成長を進められるのは、むしろ最初から大きな期待をかけずに、一歩一歩進んでいこうと決心されている方です。そうした方は、今の自分に対してもさほど否定的な感情は抱いていらっしゃらないようです。人生の全てのステージが、それぞれ意味のある学びだということを本心から理解され、受け入れていらっしゃるのだろうと思います。

 人生の学びは一歩一歩、遠い道のりのように感じられるかもしれませんが、意識の拡大というものは、加速度的に進んでいくものです。一度気づきが起こり、そこで覚醒が進むと、魂がグンと成長し、世界が大きく開かれていきます。それまで自分が小さな世界の中で身動きが取れなくなっていたことを、不思議に思うくらいです。そうしたことが何度も何度も繰り返されて、どんどん意識が拡張していくと、今までよりも気づきのスピードが更に上がり、いろんな出来事が起こっても、動じなくなっていきます。以前よりも視野が広がっているので、同じような問題が起こった時も、かつての自分より難なく対処できていることに気づき、驚くでしょう。または、以前は”問題”だと捉えていた事象も、引っ掛からなくなってきます。気にならないのです。気にならないということは、余計な感情に自分を支配されることもないということなので、気持ちがなだらかな状態が続き、楽でいられます。

 

 そうした成長も、とらわれや驕りがあれば、かえって困難なものになります。今の自分を認められない気持ちが強かったり、こうありたい自分の姿に必要以上に執着していると、それが逆に妨害要素となり、魂の成長が遅れます。

 様々な情報が氾濫している今だからこそ、理想郷を追い求めてしまうものなのかもしれません。私自身も、かつて情報の渦に巻き込まれて、自分を見失いそうになったことがありました。けれど、結局外からの情報は100%自分にとって当てはまるとは限らないのだなということに気づき、最近はそういう心づもりで本なども読むようにしています。

 ”自分”がどう思うのか、どう感じているのか。本当の答えは、自分の中にあるものだと思います。様々な本を読んだとしても、そこに反応している自分の感覚というものを大事にして、外からの情報には必要以上に振り回されない、動じない。そうした強い気持ちを持つことと、いかなる自分も受け入れるという柔軟な姿勢、柔軟な対応、柔軟な考え方。一歩一歩進んでいくという根気強さ。柔軟さと強さを同時に鍛えていきたいです。