あきらめないことと努力が導く結果

 先日、私が愛してやまない宝塚の公演を観に行ってきました。ここ数年ずっと応援しているスターがお目当てで行ったのですが、舞台が始まってしばらくしてから、私はある方に目が釘付けになってしまいました。初めて見る方でしたが、独特の存在感があり、よく通る声と思わず魅了されてしまうような魂の入った演技で、トップスターにも劣らないオーラを放っていました。

 休憩時間中にどんな方なのだろうと調べてみたら、「専科」という、宝塚で特に実力に秀でた人が退団せずに残る特別な科に所属している方だということがわかりました。そして驚いたことに、この方は宝塚音楽学校に入学時、なんと成績は最下位だったのだそうです。それが卒業時には39人中10位にまで成績を上げ(人の三倍練習に励んだとか)、そこからめきめきと力を伸ばし、新人賞や努力賞などの賞もとり、三番手スターにまで上り詰めた後、専科に異動になったとのこと。今では宝塚きっての実力派として、各組の公演において特別出演級の役どころで活躍されています。

 あるインタビューでは、自分が下からのし上がっていった経験から、今伸び悩んで自分の立ち位置がわからなくなっている後輩をみると、他人事とは思えずいろいろとアドバイスをしてしまう、とおっしゃっていました。自分がたどってきた道だからこそ言えることもあるでしょうし、その渦中にいる人の気持ちもわかるだろうと思います。

 なるほどその方の演技には独特の渋みというか、人生太く生きてこられたのだろうなと感じさせる、重厚感が漂っていました。音楽学校に入った時、もし自分の成績が最下位だと知ったら、自分には実力がないんだとあきらめてしまう人もいるのではないでしょうか。そこで腐らずに、むしろそのことをバネに努力を重ねた結果、人よりも秀でた芸を身に着けるに至ったわけです。

 私はお目当てのスターとその方から大きなパワーを頂き、勇気と希望に満ちたすがすがしい気持ちで劇場を後にしました。ポジティブに生きている人が周囲に与える影響って大きいなあ、と思います。